ブーム/取材活動 〜沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす〜
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2017.11.18 エッセイ
どうも、シバク・ドワレです。
先日、病院近くの銀行に行ってみたら、紅葉が終わっていました。
今年も名所には行けなかったなあ。まあ、箕面のお山なんかに撮影に行っても人だかりを撮るだけやし、雑菌と云う名のありがたくないお土産をいただくのが関の山なので、それで良いでしょう。
今年は10月末から11月頭にかけて、京都へ多数取材に出かけましたが、例年より観光客が少なかったような気がします。私が駅に居た時にたまたま少なかったのか、全体量が低下しているのかは不明です。
京都に限らず、北海道から沖縄まで、全国の主要観光地はほぼ七割はJRなどで来る日本人より観光バスでの外国人観光客に埋め尽くされていますね。これは観光産業に携わっている人にしたら、どうなんやろう。
大阪ミナミの心斎橋などは、ブームになる10年以上前から中国人による爆買いで、日本の地方から来た人はその巨大スーツケースに疎外されて歩くのもままならない状態でした。
いまはその爆買いも少しは沈静化したようですが、業界人に聞いた話によると、依然観光バスの数が足らず、小学生の遠足や社会見学に依頼する時に価格が高騰して親や学校が困っているそうです。
他に感じたのは、大阪〜九州でのフェリー内での一コマ。
食堂と言わず大浴場と言わず、パブリックスペースで談笑する韓国人観光客たち。談笑は良いのですが、その音声がとてつもなく大きいのです。窓ガラスが割れるのでは?ってのは大げさですが、とにかく騒がしい。
この声の大きさは、京都の高台寺や銀閣寺あたりなど、本来侘び寂びを感じるべき名園でも同じです。お国は違えど、行列への割り込みや辺り構わずの大声での談笑は良き風習ではありませんよ?
この外国人観光客への苦言とは違いますが、ブームの弊害について。
取材と対象店
私はよく、グルメ関係の取材に飲食店を訪れます。もうかれこれ30年くらいでしょうか、やりはじめて。その駆け出しだった頃から、いまだに聞き及ぶのが、テレビのバラエティ番組の取材への迷惑話。
Aというラーメン屋さんがあったとしましょう。
取材があるまでは、商店街をいつも買い物歩きする近所の人か、会社帰りのサラリーマンなどの常連で、だいたいいついっても八割くらいの席の埋まり方。満席になることはあまりありません。味は抜群で、隠れ家的に使われている名店です。でも、大将はそれで良いと思い、客の回転よりも味を落とさない事に全力を傾けていました。
それが、あるTVバラエティで、「全国ラーメン隠れ場所訪問」みたいな、タイアップ(CM)絡みではない、本来の番組制作で選ばれて交渉を受けました。
気の良い大将のこと、気軽に応じてしまったのです。制作費もかからないし、特に店の改装なども必要ないから、と。
そして、取材日近くになると、こう依頼がありました。
「〇〇さん(大将)、悪いんですけど、うちのスタッフもいますし、顔を映されたら嫌だってお客もいるんで、その日は店を閉めてくれますかねぇ」
仕方ありません。協力すると言ってしまっていますし、何より天下に名の響いたテレビ局です。実際は制作会社なんですが。
で、当日。
約10名ほどのスタッフがドヤドヤと店に来ました。タレント、ディレクター、カメラマン、音声、照明、ADなどなど。
店は仰せの通り閉店していますから、客に迷惑はかかりません。しかし、その大将は本当に人がよく、たまたま私の得意先である出版社の雑誌取材も同時に受諾していたのです。
こちらは、ライターと私の2名。
数の論理です。負けますわな。
待ちましたよ、ひたすら。
ようやく私たちが映り込まないスペースが確保できたので、なんとかその日の分の取材を終えて、早々に引き上げました。
そして、後日談。
そのバラエティは、けっこう人気の番組らしく、その回も視聴率が良かったらしいのです。放映翌日から、店の前には大行列。ただでさえ前日に臨時休業して入れなかった常連さんが、苦情を入れたくらいの待ち時間ができたそうです。
しかし、それも一ヶ月も持ちませんでした。
雑誌と違って、テレビ番組を録画して保存までする人はそうはいません。毎日のように行列が少なくなり、ついに誰も並ばなくなりました。すでに視聴者の頭には、次の番組で紹介された新しい店へと好奇心が移ってしまったのです。
そして、常連たちもその行列に嫌気がさして、他へと流れて行ってしまったのでした。
閑古鳥が鳴いているその店に別のメニュー取材で訪れた私は、その話を寂しそうに話す大将が不憫でなりませんでした。また常連客が戻れば良いのですが。
きれいに染まったカエデやもみじも、いつかは終わりを告げますよね。
終わってしまう前に、次への開拓をしなければいけませんね、何事も。
2018.11.18
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