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雑感/がんと仕事の両立 〜諫言も甘言も受容できるおおらかさを〜

雑記/エッセイ 闘病記

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            本文と画像は無関係です

2016.9 エッセイ             

どうも、acsekitoriです。

私は10年前に父を亡くしましたが、その忌の際に立ち会うことはできませんでした。僅か数時間前まで病室で付き添っていたのですが、東京へ出張撮影するために帰宅して出発した直後に息を引き取ったのです。

直接の死因は多臓器不全でしたが、遠因として三ヶ月前に誤嚥による気道閉塞で脳死状態となり、以後予断を許さない状況にあったのです。母からは、なぜ仕事を休んで付き添えないのか叱責されました。私だって休めるものなら休みたい。幼い頃から尊敬していた父の臨終です。

しかし自由業写真家である私は、打ち合わせ程度ならなんとか延期してもらえたかもしれませんが、その時は重要な撮影なので休むのは不可能でした。個人的な撮影ではなく、大掛かりな多数の関係者が関連した動かせないイベントだったので、尚更休むわけにはいきません。ましてや、三ヶ月もの間いつくるか判らない臨終に備えてスケジュールを全て空けておくなど不可能です。その時の収入が無くなるのみならず、それ以降の依頼が激減するのは自明の理だからです。新しい得意先を開拓しようと名刺を配っても、一朝一夕には行かないのは如何なる業務でも同様でしょうが。

真剣な話、自分が意識不明にならない限り例え熱があったとしても現場に行かなければならないのがこの仕事の悲しい宿命。帰宅して通夜に駆けつけたのは始まる10分前、告別式当日も別件の撮影を終えてから直前になんとか間に合うといった状態でした。

 

このような結果になったのは、私が良い歳をして社員も雇わずに一匹狼のフリーランスフォトグラファーをしているからでしょう。そう、代わりがいないのです。しかし、私はこのスタンスを崩すつもりはありませんし、これが結果として今自由に治療ができる業務形態となったのですから、何が幸いするかわかりません。

社員を雇えば、当然生活の保障をしなければなりません。それなら、病に伏せることなどできず検査も受けずに働き続け、がんの発見時には既に終末期だったなどは世間を見れば容易に想像がつきます。

 

今回のがん治療入院でも、以前から受託している業務のため、下痢をしながら何度か仕事に出かけています。もちろんドクターから許可を得ています。在宅で抗がん剤治療をする選択もあるでしょうが、私の病院は自宅から離れており通院が大変ですし、何より重篤な副作用が起こった時に妻では対処できません。治療しながら仕事ができるのも、病院で管理してもらっているからこそなのです。

私の場合、ステージ4のがんになっても馬車馬のように働かねばならないのは、ひとえに生涯裕福と言えるほどの貯金もせずに遊びまくっていたツケでしょう。僅かながらの貯金など、10年に及ぶ闘病ですぐに底を突きました。しかし、働いているからこそそれをモチベーションとして辛い治療にも耐え、自ら稼ぎ出した貴重なお金で旅をする。この生活に大満足しています。

 

少し話はそれますが、私はフリーランサーですので上司も部下も存在しません。しかし、企業CM撮影などの業務を通じて、大小問わず各種様々な会社人と接する機会は多いです。

そこで目にして耳にするのは、若い人の叱責への耐性の無さ。怒られるのは、裏返すと信頼されており育って欲しい証なのです。我々自由業は重大なミスをしても怒られる事は稀です。その代わり、以降の依頼が来なくなるのと、損害賠償や違約金などが発生します。ビジネスですから当然でしょう。これは極端な例としても、叱咤を激励と受け取れずに自分の中で嫌われていると脳内変換してしまい、以後コミュニケーションを取り辛くなる方も散見します。

陰惨なイジメは別問題として、もう少し許容範囲を広げて積極的に上司や後輩と密にコミュニケーションを図り、仕事の幅を広げても損はないと思います。繰り返しますが、気にかけているからこそ叱るのです。傷の舐め合いでは業務は成立しません。

 

一見華やかに感じられる横文字職業や芸能界。他にも弁護士や医師など、自由業に憧れを持っている若い方や学生さんも多いでしょう。それらの夢を追いかけるのは大賛成です。ここで敢えてフリーランサーとフリーターの区別はしませんが、終身雇用制や年功序列が崩れてきている現在、自らの能力を試すことのできる分野に挑戦するのは素晴らしい。それこそが若さの特権でしょう。

しかし、何事にも裏表があるのは世の常。有給休暇などはもちろん存在せず、業種にもよりますが世間が遊ぶ時に仕事をする方が多いです。友達との約束をしていても急な仕事の依頼でドタキャンも常。常に冷静に感情をコントロールできないと、プレッシャーに押しつぶされるでしょう。それを乗り越えるのが快感でもあるのですが。

 

華やかな舞台の裏側には、それを支えるだけの遥かに多大な苦労が隠れているのもお忘れなく。 

2016.10.22