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星/雑感 〜キラキラと輝く何かを持っている〜

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2019.5.31 エッセイ

どうも、シバク・ドワレです。

星。

ちょっとピンがぬるい画像ですが、大好きなリンゴの真ん中には星があります。知ってました?

 

私がこの世に生を受けて、初めて固唾を飲み興奮のるつぼに陥るほどの星を見たのは、高校山岳部に入部して初めての夏山合宿で訪れた北アルプス後立山連峰幕営指定地でした。

その合宿は、新人部員として辛く苦しい30kgのボッカ訓練や、奈良県の行者修行の地である大峰山系奥駆け道での準備合宿を終えて、夏休みに入って直ぐの梅雨明け十日に始まりました。

 

大好きな鉄道の旅で、京都駅から名古屋駅まで新幹線。名古屋から松本まで特急しなの号の振り子に揺られ、普通電車に乗り継いで夕方近くにようやく白馬駅まで辿り着きました。

当時の大阪府立高校での合宿は、修学旅行に準じて四泊五日と期限が定められており、夜行列車を使うと却って1日損するので、朝早くに離阪したのです。

 

最初のテン場である白馬尻に着いて家型テントを張り、日本有数の大雪渓から融けだした冷たい水で顔を洗い、翌日からのハードな縦走に心踊らせていました。

2日目の大雪渓登りも好天のもと順調にこなし、その日は稜線にある白馬岳キャンプ指定地にて幕営します。

3日目はテン場から白馬のピークをピストンしたのち、杓子岳〜白馬鑓ヶ岳と三山縦走を終え、最初の難関である唐松岳への不帰(かえらず)キレットが待ち構えています。

 

まさに馬の背のような、両側が切れ落ちた断崖絶壁の縦走路に肝を冷やしながら重たい荷物に喘いでいると、谷底へとぶら下がっている一本のザイルが目に留まりました。

あとで聞いたのですが、私たちが歩いた前日に、女子高生が背中のザックを岩に引っ掛けて転落し、亡くなる遭難事例が起こっていたのです。

下へ続く

初めての貴重なる経験 

その後の大学山岳部での岩登りを思えば大したことは無いのですが、高校山岳部の新人にとっては難関に思えました。しかし通過する時にはそのような悲しい事故が起こったのも知りませんでした。

私たちは無事にその難所を通過して、唐松岳も登頂して地上の楽園を縦走し、五龍岳の指定地にて第三夜を迎えました。

そこではそれまでの好天が一変して、雨は大したことないのですが、この世の終わりかと思わせるような強風が吹き荒れて、なんと、今は懐かしの家型テントのポールがポキッと折れてしまったのです。

その夜は交代で不寝番を作り、テントが飛ばされないように内側から抑えて朝を迎えました。

 

そしていよいよ夏山合宿もクライマックスを迎え、五龍岳を登頂したあと核心部の八峰キレットを越えて、鹿島槍ヶ岳の美しき双耳峰の登頂を果たし、冷池山荘(つべたいけ)の指定地で最後の夜を過ごしたのです。

そこには水場がなく、小屋で水を売ってはいますが山岳部はそんなもの買いません。

そのため、部員一人一人の担ぎ上げたポリタンの水で米を炊き終えると、その夜は1人スプーン一杯の飲み水しか当たりませんでした。

 

その夜はポールが折れたテントを、まるで掛け布団のように首まで被って、部員全員が雁首揃えて眠りに就いたのです。

しかし16歳の多感な頃に、喉は乾くわ、頭は寒いわで寝られる訳もありません。

ところが天は、そんなちっぽけな存在ではあるけれど一生懸命やってる若者を見放しませんでした。

眠れぬ夜の固い目で、見上げた空にはこの世のものとは思えぬ満天の星々。

 

もう視界の端から端まで星、ホシ、ほし。

誰ともなく、

「キレイやなぁ」

と呟く他には、言葉も浮かびません。

 

すると、視界に飛び込んできたのは北から南へとスーッと動くひときわ明るい光条です。

流れ星かと思い、

「金カネかね」

と、なんとも非ロマンチックな呪文を唱えることに成功したのですが、その光は一向に消えません。

確か男の先輩やったと思うんですが、

人工衛星や!」

と言い放ちガッカリするやら珍しいやら。

やはり人工衛星では金の願いが叶うはずも無く、その後の清貧人生の始まりではありましたが、実に貴重な経験ができました。

あの強風が吹いて無ければ、3000m近い稜線にてテントを被り顔を出しながら朝を迎えることなどなかったでしょう。

 

その夜が、その後のモンブラン登頂まで私を山に釘付けにしたのは間違いありません。

 

ああ、また3000mに登りたいなぁ。

それは無理でも、この夏は上高地あたりで星でも眺めましょうか。

2019.5.31

 

ご閲覧ありがとうございました。よろしければ他の記事も覗いて行ってくださいね。 自作キャンピングカーと大型オートバイを中心に、夫婦での旅記録が主な内容です。

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