山岳部OB会 惨状顛末記/山岳部OB会高校編 〜顔面強打への心肺確認すれど、嘔吐物への気道確保をすれど、平常心で〜
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2017.11.25~26 OB会報告
どうも、シバク・ドワレです。
久々に遭難救助をしました。それも、自己パーティのメンバーを。一応、山ですがバス通りまで100mの山小屋近辺で。
たいそうな書き出しになりましたね。しかし、一歩間違えれば、人の生死に関わる出来事でした。
25日の土曜日、ある山小屋を借り切って、OB会は順調に始まりました。駐車場から200mほどたくさんの荷物を持って歩きますので、それで疲れたメンバーもいたかもしれません。私じゃ無いですよ。ご老体です。
今回は妻も連れて行くので、たいへん楽しみにしていた私です。
素泊まりの山小屋ですので、山形牛ステーキ弁当@2500を手配してあり、16時の集合時間にデリバリーしてくれました。
乾杯から20分ほどですが、後で出てくる今回の主人公、一期生のY先輩が持参してくれた上等なボルドー産ワインも、もう半分くらいになっています。
和気藹々ですが、このペースの速さが後の惨状の序章となることは誰も知らずに・・・。
ワインの向こうでは、我がOB/OG会のクイーン、四期生のC先輩がワインをたしなんでおられます。
一期生が59歳、今回最年少の私が六期生で54歳ですから、まだまだ実業現役世代。
土曜日ではありますが、仕事を終えてから駆けつけるメンバーも5人ほどいました。この画像で17時頃。
まだ、よかったんです。
この山小屋は二棟が棟続きになっており、一階は8畳ほどですので、一棟では総勢13名には狭いです。
しかし、一階は隣と別々なのですが二階のふすま状の間仕切りを開けると、約16畳ほどの空間が生まれますので、二棟借りていた我々はそこで宴を開きました。言い換えると、混雑期に知らないパーティと隣同士になると、声は筒抜けで防犯上もあまりよろしくありません。
靴の多さが今回の盛況を物語っています。
前回の例会は上高地で二泊しましたので10名ほどでしたが、それよりは多いです。変わらんか。卒業して早い人は43年ですが、仲の良いOB会です。
このときはまだ良かったが
宴たけなわですが、まだ女性2名、男性1名は仕事が終わっておらず来ていません。
ここでいちばん手前のベージュのウェアを着たY先輩の様子がおかしいことに気づきました。その隣に座られている、同じく一期生のO先輩が久々の参加でしたので、同期同士で話しが盛り上がり、酒も進み。
で、Y先輩が立ち上がるときにふらついていたので、左端に座られているオートバイミーティングや北海道ツーリングでいつもお世話になっているT先輩に声を掛けて二人で肩を抱えながら屋外にあるWCへ連れて行ったのです。
部屋から一旦外へ出て、階段を少し下ったところにトイレ棟があります。
トイレにも階段があり、そこはすいすい登られたので油断しました。まさか先輩の逸物をつかみながら小用してもらうわけにもいかず、外で待っていました。
で、元気におしっこが終わったとの報告を受け、我々が先に歩いたのが迂闊だったんです。私としたことが、油断禁物。
トイレ棟から部屋までの山道階段が、ちょうど中間点で70度ほど右に曲がっているのですが、T先輩と話をしながら歩いていて何気に振り返った途端、私の視界からY先輩が消えました。
手すりがあるところと無いところがあるのですが、その隙間を狙ったように、1m程下のBBQ場へとダイブしてしまったのです。
すぐに駆け下りて、まず気を失っていないかの確認。
返事はあります。額からの出血が気になりますが、首はなんとか痛めていない模様。救急車を当然考えましたが、とりあえず直ぐに部屋からティッシュを持ってきて止血。
右手も左手も、両足も動きます。
むしろ顔面を打ったものの、その擦過傷がクッションになったようで、首の痛みやしびれは訴えていませんし、生年月日や氏名、今日の日付などをしっかり答えてくれましたので、本人の希望もあり救急車は見合わせました。
これで心肺停止や意識喪失があればおおごとだったのですが、まあ大丈夫だろうと判断して布団を敷いて休んでもらいました。時は21時ころ、まだ宵の口です。
起きてきたY先輩の額の傷が痛々しいですね。
これで終わるはずでした、アクシデントは。
私は相当、いろいろな現場で場数を踏んでいます。レスキューでは素人ですから、もちろん救助の現場だけではなく、撮影の現場や家族問題の現場、そして自らの人生の進退を賭けた病気との戦いの現場です。
ですが、この日は相当な体力と精神力を要しました。いっぺんにくるからです、トラブルが。まだまだ修行が足りませんね。
次のアクシンデントは、酒の席ではまあよくあることですが、酒宴の場所が悪かった。
やはり、山小屋へ行くのはもう無理なメンバーが多いのでしょうか。
Y先輩も時折座るまでに回復し、私はレスキュー疲れを取ろうと、ビールを再び飲み始めた矢先。
十年ほど前に脳梗塞を患い、まだ多少ろれつと右手に障害が残っている四期生のH先輩の姿が見当たりません。その病気の重さを知っているメンバーが、飲み過ぎるなと忠告していたのですが、やはり久々のOB会で気分が若かりし頃に戻ったのでしょう。
みな、Y先輩が重態に堕ちいらなかった安心感から誰がいなくなろうが、構っていない様子です。
しかし、私も人のことは言えない病気の現役患者ですから、酒のペースを落としていたのが幸いしました。
小用にしては遅いし、うんこをしているにしても、その格好のままで大個室で寝ていたらH先輩も末代までの恥だろうと思い、一人捜索に出かけました。夜風はたいへん冷たく、ダウンジャケット無しではさしもの野生熊の私でも身震いするほどです。
先ほどのY先輩の滑落現場を重点に捜索しようと思っていた矢先、何気に、本当に何気にその5m程手前の植え込みが気になったのです。
ちょうど山小屋の陰になっており、街灯は届かず真っ暗の植え込みの中に、二つの足先だけあるのを発見しました。斜面に頭を下にして、足先だけが見えたのです。
100kgはあろうかとのH先輩、私だけで引き上げるのは不可能です。
直ぐに部屋に飛んで帰り、元気そうなメンバーを厳選してレスキューの必要性を訴えました。すこし女性陣を中心に部屋がざわつきましたので、被害拡大を防ぐために、落ち着くことを指示しました。
そして、3人がかりで斜面から要救助者を引き上げて、すぐに安否確認。
返事はありました。
植え込みに倒れこんだのが幸いして、今度は怪我も無さそうです。またまた布団を敷いて、二人目の安静命令。そう、幹事であり、いつもチーフリーダーを拝命している私からはもう先輩だろうが要救助者ですから、命令です。
これで終わるはずだったんです、本当に。
もう、退院直後の私は疲れてきていました。
女性2名が仕事を終えて到着してすぐの、レスキュー騒ぎ。
先に寝かしつけたY先輩の額の惨状を見て少し動揺していましたが、安心させて飲み会を再開して1時間ほどは、ようやく平穏な時間が流れ始めていたんです。
すると、後から来た五期生女性のM先輩が、
「ドワレくん、危ないかも!!!」
と絶叫しました。
その指差す方を見やると、なんと後から寝かしつけた転落者其の2のH先輩が、仰向けで一言も発しないまま、嘔吐していたのです。
普通、酒飲み会場での嘔吐は、ゲロゲロゲロとカエルの大合唱になりますから、すぐ気づくのですが、本当に無音でした。
むしろ、転落よりこれがヤバイ。
まずは二期上の女性、C先輩に、
「スマホの用意して!119番の用意!」
と命令しました。
要救助者2の二回目のレスキューを行うべく、ティッシュを持ち、のっしのっしと近づいた私は、極めて冷静を装って鼻と口から嘔吐物をかき分けつつ、彼の心臓に手を置きながら声を掛けました。
最初返事が無かったのですが、気道確保が済んだ瞬間から声が出ました。幸いな事に、嘔吐物は口中にとどまり、気道へは入っていかなかったようです。
すぐに、
「あ〜っと言って」
と言い続けると、当初は弱々しく、次第に元気に声が出てきました。
脈も平常、心肺へはまったく影響が無かったようです。
119番は今回も見合わせました。
やれやれ。
これが、アクシデントの顛末です。
あと、深夜に見知らぬ大学生が勝手に入室してきて、追い返すと靴を履き間違えて帰るとのおまけまで付きましたが、もはやそれしきの事態はアクシデントとは呼びません。
もちろん、当事者2名は深く反省していたようです。これが大都会の飲み屋なら、あそこまで深酒することは無かったでしょう。
勝手知ったる仲間と、山の話に花が咲く。
場所は山小屋。いつでも寝られる、との安心感からつい自宅のようなやすらぎを覚え、飲み過ぎてしまったのでしょう。
しかし、もう60間近なのですから、酒はもう少し控えめにしなければなりませんね。
これらの文章のうち、私の判断ミスが何点かあったと思います。
言い訳ですが、私も疲れている上に酔っていたのでしょう。プロを呼ばずに、医療従事者でも無い自らの手だけで判断・処置を済ませてしまいました。
これは結果オーライで笑い話で済んだのですが、死亡事故へ繋がっていたとしたら、やはり重大なミスだったと思います。
しかし、これが車道など遠く離れた本当の山中なら、119番が繋がったとしても、救急車なんか来ません。夜間であり森の中ならヘリも無理です。
その時にどうするか。
長らく登山を休止中の私ですが、再開へ向けて貴重な一晩となりました。
2017.11.27記
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